「男はつらいよ」v.s.「少女はつらいよ」――思春期

小学校の高学年くらいから、子どもはそれまでの世界から少しずつ離脱して、思春期という未知のステージへと移ってゆく。男の子はそこから漸進的に大人になってゆくが、女の子の場合は大人の女になることに向き合うという、男子にはないプロセスがひとつ入る。思春期には男子でもけっこう身体周りにコンプレックスを持ったりするが、少女たちの場合はさらにいっそう容姿コンシャスになると思われる。この時期、男の子たちは競う合うため大人ぶって背伸びをしがちだが、少なくとも精神的にはまだ子どもでいられる。だが少女たちは、子どもと大人の女の境界領域にいるといえる。そこはリミナリティでありカオスでもあるので、状態としては遷移的で不安定だ。そこでは、身体が大人の女に変身してゆくことや、女として美的尺度で見られることにたいする不安や戸惑いや嫌悪感を伴う。それでそれらの受容に消極的だったり、なかには否定的な者も現われてくる。ずっと子どもの世界に留まろうとしたり、大人の女の代わりに男の子の世界や性別を越えた精神的世界へ向かったり、あるいはファンタジーなどへ向かう子たちだ。それがまた、永遠の少女性へのあこがれや、「ボーイズ・ラブ」という不思議な発想、あるいは(女である)母親への嫌悪感というかたちで現れるとされる。
さらに少女はこの時期、大人の身体になっていくと同時に、消費文化に浸透された身体を生きることになる。そうして思春期の少女たちは、高度消費社会からもたらされる欲望と内から湧き起こる欲動とによって駆動され、フラジャイルやヴァルネラブル(こわれやすい)であると同時に(なんせ十数年の人生経験があるので)しなやかさももち合わせた、男から見たらよく分からない異教徒的存在となるのだ。ひとによって違うだろうけど、この時期は女の子にとって一生のうちでも最も、楽しさやしんどさや希望や不安の入り混じった複雑な時期であるかもしれない。

    男子にもけっこう共通部分があるけど、個人的体験を強引に一般化してしまうと、概ね男子はアホです。