「家」とハイアラーキー組織(官僚型組織)

防衛と攻撃
どんな動物でも何かを防衛しようとするときは、かなり強力な攻撃性を発揮する。まず自分たちの巣や子の防衛であり、その次に獲得した獲物の防衛だ。蜂やカラスは巣に人間などが近づくと執拗に攻撃してくるし、熊などもとくに子連れのときは恐ろしいと言われている。
スズメ蜂は樹液の出るところなど、自分たちの餌場にしているところでも攻撃性が高くなる。*1 また、むかし北海道の山で登山パーティのメンバーが何人も熊の犠牲になるという事件があったが、それは熊に荷物を取られたのを再び取り返したので、熊が怒ったからだとされている。いったん自分のものとした獲物にたいする執着は、すざましいものがある。そしてそれは、利権や領土を巡る人間世界での出来事についてもいえる。
 
増殖と分化
蜜蜂などが巣の中で個体数が多くなり、その一部が女王蜂と一緒に新天地を求めて巣を飛び出すことを分封という。そのとき分封群は新しい巣の場所が決まるまで集団で木に止まいぇいたりするが、それを捕まえて飼おうとする人がホウキなどでゴッソリ払い落としても、何も抵抗しないくらいおとなしい。つまり、守るべき巣や幼虫がない状態では、まだファミリーでも機能集団でもないので、防衛モードにスイッチが入らないのだと考えられる。*2
 
「家」とハイアラーキーの相似
前回エントリーの脚注のところで、ハイアラーキー組織(官僚型組織)の原型は、同じくツリーを形成する「家」(ファミリー)にあると思うと書いた。基本構造としては「家」だから、強い組織防衛本能が働くし、またメンバーを増やして組織を大きくしようとする。増分を組織の膨張で吸収できない場合は、一部を分化させる。つまり増殖と分化*3を繰り返すということ。
 
家族愛と自己愛の相似
家族をバラバラにしても、そこから社会的な文脈である「個」は出てこない。家族愛というのは、けっきょく自己愛やナルシシズムに類似したものなのではないだろうか。
 

*1:スズメ蜂は出会い頭に衝突したとき反射的に針で刺す習性があるが、そうしたケース以外ではあまり怖くないとされる。部屋に入り込んできたスズメ蜂は、手でつかもうとしない限り向こうから刺して来ることはない。殺虫剤ですぐあぽ〜んできる。

*2:社会的動物とされる蜂や蟻は、巣と女王と働き蜂や働き蟻とが全体としてひとつのシステムをつくっている。だから子供のころやったように、ビンに働き蟻だけ入れて飼おうとしても、例えばトカゲの尻尾だけ飼おうとするのと同じで、けっきょく皆弱ったり死んだりしてしまう。そのことを知ったのは大人になってからだった。また、蟻を使った現代アートというのがあって、いくつかの国に模したエリアを通路で結び、そこを蟻が行き来するという、おもしろいのかつまらないのかよく分からないもので、実際にそれを見た人は「所々で蟻が死んでた」と言ってた。

*3:分化の例として、分家、分封、官庁の外郭団体作り、ヤクザやマフィアの下部組織作りなどがあげられる。